携帯に生理予定日が届く

「次の生理予定日は6月20日(日)ごろ。次の排卵予定日は6月5日(土)ごろ。今日は卵胞期。妊娠の可能性が最も高い日です」
携帯電話にこんなメールが届くサービスが人気だ。携帯サイト運営大手、エムティーアイが2001年に構築した健康情報サイト「ルナルナ」である。昨年5月から歌手の大塚愛さんらを起用したテレビCMを流したところ、登録者は1年間で70万人から170万人へと急増。利用料金は月額189円で、登録者の中心は20~34歳の働く女性だ。
会員が入力する生理開始日を基に次の生理と排卵の予定日、妊娠可能性の高低が分かるので、生理用品の準備や旅行、スポーツの計画などに役立てられる。避妊と妊娠という登録時の希望に応じて、受け取る文面も異なる。
開始10年目のヒットについて松本博・上席執行役員コーポレート・サポート本部長は「中学生の頃から携帯電話を使っていた世代が、対象年齢に達してきた。生理は重要な健康情報なのに周囲に相談しづらい。正確な情報を求めて利用してくれている」と語る。
妊婦の8割が閲覧
ルナルナのように利用目的を絞ることで、利用者を増やす20~30代の女性向けサイトはほかにもある。共通しているのは、家族や友人に打ち明けにくい悩みをテーマにしている点だ。
リクルートは2010年3月期に結婚領域で6年連続の増収を見込んでいる。成長の牽引役が、月間2000万ページビューという結婚情報サイト「ゼクシィnet」だ。中でも2007年に追加したSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)「花嫁カフェ」が、会員間の交流を後押しする。ゼクシィnetグループの桜井まり恵編集長は「結婚準備は孤独な作業になりがち。花嫁同士のつながりへの要望は強い」と話す。
今年4月のリニューアルで新郎新婦の親が準備の進捗を娘たちとサイトで共有できる機能も加えた。「今後結婚する20~30代の親は、少し前の団塊世代より親子の仲が良い。子供の結婚に関心が強く、ネットリテラシーも高い」(桜井編集長)。親も巻き込み、結婚を盛り上げる。
リクルートは最近の結婚事情を新郎新婦の両親に解説する「親ごころゼクシィnet」を新設
出産も女性にとって結婚に並ぶ大きな行事である。1998年開設という老舗の妊娠・育児SNSが「ベビカム」だ。運営するデジタルブティック(東京都中央区)によると、初産を迎える妊婦の8割が同サイトを一度は訪れるという。ベビカムでは会員が不妊治療や姑との関係、育児での具体的な悩みを打ち明け、同様の体験を経た人がそれらに対するアドバイスを投稿している。
このようなテーマを限ったSNSでは、会員同士が盛り上がるだけではなく、消費にもつながりやすい。結婚や出産、育児の期間に買う商品の多くは、一度しか使わない。その分、真剣に悩む。ベビカムではSNSという特性を生かして商品紹介ページに会員のレビューを載せている。安西正育社長は「購入前にネットで調べるのは当たり前の時代だ。商品情報を一方的に流しても消費者に選ばれない」と話す。
ウオーターサーバー宅配のアクアクララ(東京都港区)は、乳幼児がいる家庭を対象にした「ベビアクアプラン」を昨年12月に始めた。ベビカムでのみ開始を告知したところ「需要が伸びる夏場でないにもかかわらず、想定の1.5倍に近い新規申し込みが続いている」(営業企画部の後藤公一課長)。
リクルートが昨年10月に発表した調査では、挙式から披露宴、パーティーまでにかかった平均費用は、前年比4%増の330万7000円。子ども手当の支給が始まることで育児関連支出も伸びる。「消費の7割を握る」と言われる女性向け市場の攻略には、ネットでの囲い込みがカギになる。

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こんな時代です